暗黒星雲

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2009年 02月 19日

俺の・好きな・塔の歌 2009年2月号

奥の方まで入れて下さい 恐ろしき駅前のポスト夕映えのなか (亀谷たま江)
立たされし道ちゃんはまだ笑っていてわれらは教師をにらんで耐えた (藤井マサミ)
ほの昏き海に浮きいる椅子ひとつ掛けよと闇の声に目覚めぬ (早崎ふき子)
学帽がよくにあふ写真ながめをりまだ戦争が始まらぬ日の (小林幸子)
傍らに立つて空つぽの私は透きとほりつつ微笑んでゐた (佐藤陽介)
留守電に名乗らぬ吐息ひとつあり 「午後九時六分一件です」 (武山千鶴)
走る準備つねにしていて放課後は背中の力がわずかに抜ける (中村明美)
月面で差す傘ならば何色がいいでしょうねと猫に聞かれる (萩原留衣)
母さんは幸せですかと子の問ひの唐突なれば答につまる (結城綾乃)
リードされ守られることに慣れし身の先を思いて眠られずおり (渡辺久美子)
流したる花王の白き石鹸に香るわが身よ花ならねども (常盤義昌)
忙しい毎日が少しほこらしいヒールで音を鳴らして歩く (鈴木麻衣子)
大口をあけて真白い息はいて猫娘 11月の朝 (吉岡昌俊)
仏壇の奥に黒皮の折財布万札一枚使い残して (蓮尾みどり)
われに似る目もとを少し暗ませて叶はぬ夢と言はず黙せり (澄田広枝)
わが身より抜けて出でたる悲しみの欠片のやうな黄の蝶過る (船曳弘子)
右腕の産毛抜きだす女いて午後に傾いてゆく教室 (吉田恭大)
石段を下りきて黒きかたまりが猫となるまで立ち止まりゐつ (歌川功)
椋鳥がこんなに切なく啼く夜はきつとどこかで殺戮のある (武部秋夫)
無尽数の星を仰ぎて思ふかな奪ひても欲しきもの吾になく (武部秋夫)
徒然なその日その日の吾にしてからつ風吹く横断歩道 (武部秋夫)
絶対に妥協しないでくださいと扉の前のわたしに言えり (永田愛)
履歴書を三味線として流れゆく瞽女のようなり派遣社員は (沼尻つた子)
おさな児は初めて虹を見たること小さき巫女の如く語れり (杜野泉)
白蝶のようにわが手を擦り抜けて娘は家を出てゆくのだろう (杜野泉)
現実がのみこめぬままフリーズした陸橋で君の背だけが遠のく (西野明日香)
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by araimitsu | 2009-02-19 14:48 |


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