暗黒星雲

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2009年 05月 19日

俺の・好きな・塔の歌 2009年5月号

春弥生あの世この世と地つづきの母を思へば空中ブランコ (亀谷たま江)
ここまで来たら無かったことにはできないと陣痛の半ばほどに思いき (川本千栄)
湯湯婆のぬるきを抱へ思ひゐる夜明けの夢に帰しし男 (山下れいこ)
かなしみは直截に来る少年のごとき平らな胸であるなら (梶原さい子)
格別な理由はあらず呉駅のバス・ターミナルに涙零すは (谷口純子)
心地よくみな濡れてゆくバスを降りわたしも濡れてゆくきつね雨 (髙橋窓)
穏やかな娘の笑ひがこの家の空気調節してるがごとし (川村みゆき)
山梔子の木の下影に埋めて置くBといふ名の黒白のネコ (佐竹永衣)
けふ去りていのちの縄につかまりぬわれは瘤のある人参を煮る (瀬川しん)
車椅子とベッドの間を往き来できる脚の力が欲しいぞ吾は (廣瀬達雄)
食べるとき帽子を脱ぐと三ミリの丸刈りにした頭が寒い (山崎一幸)
二十点は気合で上がると教わりて風呂場で入れているらし「気合」 (山下裕美)
ああ風はつめたく音は深きかなわがうちにわれ収まりゆきぬ (加藤ちひろ)
月の夜をわれに先立つわが影とポストへ楽しき手紙出しに行く (石川啓)
まっすぐに青芽出揃ふ麦畑彼方に若き母が立ちをり (森敏子)
手のひらを置かれゐる背の温かし小さく呼びつつ夢よりさめぬ (清水弘子)
脱衣所は通過点なり風呂に入るためだけにただ服を脱ぎおり (白水麻衣)
だんだんとこの世はくらく凝れるも胸の振子はカチカチと鳴る (武部秋夫)
また気分を害してしまった夫がいる夫でなければうまくやるのに (髙畑かづ子)
鍵盤の白と黒とが競ひ合ふ熱ある夜の夢の中には (田中律子)
俺の怒りを解くことおまえは知らないと怒鳴られている夕暮れの中 (鈴木麻衣子)
降りしのちエレベーターはましぐらにわが呼気のせて屋上へゆく (一宮雅子)
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by araimitsu | 2009-05-19 18:00 |


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