暗黒星雲

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2009年 08月 13日

鹿に逢う (2009年8月号特別作品小林幸子選)

春風に溶けだしていく野や森の意図したことも意図せぬことも
鹿に逢うまえにうかんだ泡粒のような楽想かきとめなくっちゃ
三月のうさぎの紅い目がうるみつなぐ手をふりほどく僕たち
会いたくて天気雨ふる畦道のすみれの花をつまんでたべる
月曜のビルの谷間を降ってくるカタカナだけで書かれた手紙
制服の暗いひとみに揺れるものあるんだけれど罠かもしれぬ
駅前の広場で別れあの日から五日待ってる土鳩の帰還
石段をかけ上がり来て我に説く青きくちばし閉じることなく
ふらふらと歩いてさがすみぎひだりこれからともに生きていくもの
まだ寒い水辺に並ぶもの達は煮ても食えない山からのもの
あてもなくさまよいながら待っている亀鳴く春を雑木林で
アルバムにきれいに整理して残す草冠の漢字をあつめ
海亀の嘘だったのね三日月が光る浜辺に落ちて来たって
ピクピクと手に残るのは質として切り捨てられたヤモリの尻尾
麦踏みに頬被りしてその人は寡黙であった田螺のように
ゆっくりと涙をぬぐう密林のひだまりに棲む蜥蜴のように
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by araimitsu | 2009-08-13 09:32 |


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