暗黒星雲

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2008年 08月 29日

「家族ゲーム」 

夕空をあかあかと染めふるさとの見捨てられたる廃屋を焼く
墓に立つ五葉の松は我が父の怒りの如く繁りてありぬ
くろぐろと厚い背中ににじむ汗わたしは父になれずともよい
福井まで雷鳥五号の客はみな口を開いて眠りていたり
弟のいぬ食卓にその妻が渋茶をいれる固く微笑み
一番に風呂を上がりし妹の不機嫌な髪いじる指先
食卓の我らのもとへ隣家からゆでた間引き菜届けられたり
滔々と理屈を述べる暗い目の姉に流れる我と同じ血
本当にやはりだれかに引き継いで並大抵でないそりゃそうですよ
丸二日探してもまだ見つからぬ兄が残したはずの書き置き
腕組んであたしはそれを待ちたいよ寝たりはしない満たされたのち
お願いね忘れないでねこのままじゃ往生できぬさまよえる兄
隠された夢解凍し噛んでみる賞味期限は分からないまま
蚊柱の中に降り立つ汗臭い放蕩息子母を背負いて
角笛の音に目覚める夢を見てみ空に浮かぶ兄に告げたり
日に焼けた少女と並び東進す敗戦の日の記憶探しに
革命歌うたえぬ我と妹が駅前で弾くおもちゃのピアノ
暗闇をつんざき走る列車には母と姉との放心の顔
何のため何を求めて行きしかはあやふやなれど確かに行きぬ
雲間よりひかり射しこむ碧き野へ東を発ちしときは夕立ち
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by araimitsu | 2008-08-29 17:49 |


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