暗黒星雲

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2006年 05月 05日

100首 (新井蜜)

御題目唱える亀の脳裏から消えることない亡き父の顔
刺のある言葉にいたく傷ついて打ち寄せる波じっと見る亀
街頭のテレビジョンでは海亀がうさぎのレースにコメントしている
正直に告白します羽衣はあなたを誘うために脱いだの
消火器のあの赤い色 僕たちの青春の日に失った色

誤って乗ってしまったこの列車あなたの町へ行くはずがない
流行の色だと言われ買った紅あなたにはまだ見せてなかった
早朝に下落合の交番の前で拾ったあなたの手紙
筑波嶺が夕陽に赤く染まるときあなたのいない滑り台だけ
砂糖よりあなたの蜜がおいしいと吸って飛び行く移り気な蝶

海亀は塩の匂いに導かれ生まれてすぐに海へと向かう
道理などとっくの昔に引っ込めて無理を通すは上司の海亀
水銀柱ぐんぐん伸びて40度「さすがに俺もばてる」と海亀
海亀は子亀が就寝する前に毎夜朗読「浦島太郎」
海亀が使っているのは真っ黒で丈夫な携帯メイド・イン・ジャパン

富くじに当たって喜ぶ海亀が甲羅干してるワイキキの浜
海亀は百世紀間を生き続けアダムとイブを目撃している
拝啓お元気ですか?わたくしはひとりで亀と遊んでいます
ひな壇に黙って並び整った顔して世界を見ている二人
ひび割れた硝子の窓に大陸の黄砂が積もり失った恋

響き合う未来の歌を織姫と奏でたかった彦星の笛
柔らかなすずらんの芽が黒土を押しのけるごと伸びゆくきみは
海亀のレースの予想 誰だろう一番先に卵を産むのは
先のない俺にはたぶん糠に釘 針のむしろとなるはずの日も
あくびして開けた口から地に満てる悪霊たちが飛込んでくる

釘を打つあなたの腕に盛り上がる汗に輝く筋肉の山
水晶の原石を今ハンマーで粉々にして水に溶く父
トランプのハートのような赤色のセーターの中のきみの心臓
明け方の眠るあなたを箱に入れ静かの海に流す涙は
老人を背中に乗せて海亀は海岸通りをとぼとぼと行く

人生の最終章を迎えつつ焼きたけのこに醤油をたらす
日溜まりのオープンカフェで海亀のスープを飲んで思い出す過去
電報が散らしたサクラひらひらと舞い降りて来る校門の前
事務室で事務服を着て事務を取る事務員さんが通ってるジム
あかつきにふたり荒野をさまよえば成層圏の記憶する夏

雷鳴が近づいて来て去って行く間に失うであろうものたち
黒百合の庭で見下ろす深い空 赤ビロードのマントを敷いて
真昼間のソープオペラのキッチンで光を放つアルミニウムよ
竹の葉のさやぐみ空をぬばたまの黒き星より調べふり来る
注射器の先から上がる噴水のしずくを受ける看護士の腕

海亀に乗って花見の御寮人 韓紅の蹴出しをちらり
くちびるとくちびるそっと触れ合えばきみのなみだが甲羅を濡らす
抵抗は止めて出て来い海亀よお前の要求全て飲むから
満月のうさぎは亀の生態を遠眼鏡にて観察してる
とおせんぼしないでくれよあの浜に俺を待ってる亀がいるんだ

頬寄せて二人で海を見てたとき亀の斉藤が生まれたらしい
虫愛づる姫君のため海岸で毛虫を探す亀に雪降る
海亀の海亀による海亀のためのブログを開設しました
舞妓さんがぽっくり下駄で飛び乗ってバランス取ってる亀の背中で
ひとしずく涙をこぼす海亀は「生きる」ということ考えている

萌葱色の一重が包む人妻の丸いお尻をじっと見る亀
戦争で埋められたままの地雷踏み吹き飛ばされた海亀の首
ヤンクミが斉藤さんちの海亀のアイドルだったもう来ない春
辞書を引き贋海亀を調べたら英語はMock Turtleらしい
凍傷に掛かった指を海亀がなめてくれたが治らなかった

海亀を仰向けにしてコピー機のガラスに乗せて撮った曼荼羅
海亀が見上げる空の一筋の飛行機雲はカリマンタン行き
海亀が歩いたあとの曲線はフラクタルとして説明できる
豆粒と一緒に煮込んだ海亀はこんな味ではなかったはずだ
海亀の最期のうめきわが耳にこだましている スープがうまい

海底の道なき道を歩んでく海亀の目に秘めたる決意
乙女らが羽衣脱いで汀にてたわむれるのを見てる海亀
灯台の光が波を照らすとき宇宙の神秘を憶う海亀
花びらの散り舞う中を海亀は巣立つ子亀を見守っている
組からは足を洗えと言われたがすぐに汚れる海亀の足

切り株につまづき転ぶ兎には届かなかった海亀の愛
海亀に出会った夜のシャンプーの香りをさっき嗅いだ気がする
鍵かけた日記帳には海亀が俺とのことを記録している
上海で食べた海亀スープには砂が混ざってじゃりじゃりしてた
寂しくて寂しくて俺この浜に卵を一つ産み落としたよ

政治家が海亀たちと友好を深めるための竜宮パーティー
若草の妻が欲しがる海亀を何も持たずに捕まえに行く
おたくにはおたくの言い分あることは分かっていますでも嫌いです
海亀の嘘だったのね三日月が光る浜辺に落ちて来たって
直垂の下の袴を海亀が烏帽子とともに盗んで来た朝

赤とんぼ稲穂の上のホバリング見えるはずない海を見ている
牛乳をこぼしてしまって泣いているきみの涙を海亀が舐め
結び目がほどけなくなりこれ以上一緒はいやと切ってしまった
レントゲン技師の彼氏が言っていた 海亀だって肺結核に
海亀の斉藤さんは美大出の才媛らしい美人じゃないけど

信号で急停車した目の前を海へと急ぐ海亀家族
雨の日は唐傘さして海亀の背中で白浪五人男
海亀がスカートの中もぐりこみもそもそしてるエッチな海亀
海亀も更年期にはのぼせると医学辞典に載ってるらしい
せせらぎは小水の音 海亀が喉が渇いて水飲み過ぎた

海亀の秘密を知ったあなたとは生きて行けないミロソヴィッチよ
入れ墨で龍を刻んだ背中から吹いてくるのは生ぐさい風
クリームの歌ったホワイトルームには一輪挿しの真っ赤な薔薇が
赤んぼが歯のない口で思い切り俺の指噛む いたいよ痛い
ベランダに並んで町を見下ろした荷物を出したからっぽの部屋

覚悟決め桜の下を歩いてく頬にひとひらふれた花びら
慣れていたあの椅子がないこの部屋の赤い光が俺を拒否する
父親になんてなりたくなかったと思ってる春 雲が流れる
揺れている朝のブランコ 足音が遠ざかる朝 ブランコ揺れる
自転車で通うあなたに会釈され酸素が欲しい春の日の朝

ベランダに並んで町を見下ろして引っ越しの日の夜を待ってる
キッチンに立つたびきみを思い出す 穂村弘のファンだったきみ
きみからの手紙待ってる土曜日の午後は掃除と洗濯をする
中指の付け根の白い傷跡の痛みを思い出せないでいる宵
かんからが風に飛ばされ転がって俺の先ゆく もうすぐ夜明け
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by araimitsu | 2006-05-05 05:29
2006年 05月 03日

完走報告 (新井蜜)

完走を報告します もう一度走ってみたい題詠マラソン
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by araimitsu | 2006-05-03 06:01
2006年 05月 03日

100:題 (新井蜜)

御題目唱える亀の脳裏から消えることない亡き父の顔
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by araimitsu | 2006-05-03 05:39
2006年 05月 03日

099:刺 (新井蜜)

刺のある言葉にいたく傷ついて打ち寄せる波じっと見る亀
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by araimitsu | 2006-05-03 05:26
2006年 05月 03日

098:テレビ (新井蜜)

街頭のテレビジョンでは海亀がうさぎのレースにコメントしている
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by araimitsu | 2006-05-03 04:55
2006年 05月 03日

097:告白 (新井蜜)

正直に告白します羽衣はあなたを誘うために脱いだの
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by araimitsu | 2006-05-03 04:44
2006年 05月 02日

096:器 (新井蜜)

消火器のあの赤い色 僕たちの青春の日に失った色
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by araimitsu | 2006-05-02 06:22
2006年 05月 02日

095:誤 (新井蜜)

誤って乗ってしまったこの列車あなたの町へ行くはずがない
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by araimitsu | 2006-05-02 06:13
2006年 05月 02日

094:流行 (新井蜜)

流行の色だと言われ買った紅あなたにはまだ見せてなかった
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by araimitsu | 2006-05-02 06:09
2006年 05月 02日

093:落 (新井蜜)

早朝に下落合の交番の前で拾ったあなたの手紙
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by araimitsu | 2006-05-02 05:56