暗黒星雲

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2008年 09月 30日

雲井阪

指差して確認するはこの部屋に我のほかには誰もいぬこと
真夜中にみず飲みにいくのはきらいトイレのドアがきいっとなるから
知っている音調なんだ予告なくこれを聴いたら隠しきれない
しかたなく月に刺されていっぺんで鱗はげ落ちいのちのはてに
一日のはじまりに咲く朝顔の色に染まった高い穹窿
茶を運ぶ足が乱れて絨毯にこぼしてしまった沈む横顔
トトトトと速く打つ音ゆっくりと三度打つ音ノックの違い
新聞に挟んであったていねいな文字で書かれたあしたの予定
昼休み並んで歩くきみのこと我が子のごとく自慢したくて
バーゲンのジーンズ売り場の前で待つ 買い物客の群れを眺めて
振り向いて我をみつめる黒き目の青いターバンを巻いた少女よ
雲井阪ふたりで歩くおそ夏の降り止んだ午後葛切り食べに
火薬庫に近づいていく僕たちの帽子のつばを汚す小鳥ら
体色は葉に似せている青虫も樹下に落とした糞は隠せぬ
蛍篭つるした蚊帳の裾くぐり川の字となる叶わない夢
一瞬のためらいののち振り向いて離れてゆきぬ金曜の夕に
半袖のブラウスの色一日のはじまりに咲く朝顔の色
いつのまにこんなに暗くなったのか晒しの刑が終わった広場
空よりは見知らぬ人が堕ちてくる音におおわれ声を忍んで
コピー機のそばにたたずみその熱に癒されている秋のはじめに
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by araimitsu | 2008-09-30 14:03 |
2008年 09月 29日

塔e歌会2008年9月詠草

あなたにはぱっと捕まる襟つかみ肩はたちまちのしかかられて
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by araimitsu | 2008-09-29 20:31 |
2008年 09月 22日

毛細血管

薄暗い廊下の端の手洗いの鏡に映る在りし日の父
取り返しつかぬことのみ浮かびくる深き沼なり家族というは
父さんがその母さんにあげていたお札(さつ)が夢に貼りついていて
美術商森川はドア閉ざしおり雨に鎮もる福井あるけば
聖母像掲げる山車を引く群れが引き寄せられていく火薬庫
姉さんの白いセーター抱きしめて防虫剤の匂いにひたる
打ち寄せて崩れて返す 京都線となりに座る居眠り少女
弟の妻にもらった名刺入れ俺が誰かを忘れぬために
二階から駆け降りくればごめんねと間違い電話のすすり泣く声
なぜかって身体のことに興味あり登録したの怪しいけれど
太陽光写真に写す葉脈に似た妹の毛細血管 
てのひらとてのひら合わせみつめれば指紋認証ゾクゾクとして
明かり消し風呂に浸ればりりりりと妻をもとめるこおろぎの声
舌を見よ見つめていると誰でもがたかまってくる嫉妬がわいて
兄に会うあしたのためにコンビニの光の中へナイフを買いに
右端の棚にありますリンゴ剥く用途以外の使用不可です
ほんとうのことは書けない要注意でもなんか変むちゃむちゃ元気
また今朝も暗い顔して昨晩の残りのおかず器に詰める
ひえていく白い便器に鱗粉が描き足してある ひかり波打つ
死にたえた終着駅の八月の鏡の中に目を光らせて
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by araimitsu | 2008-09-22 14:21 |
2008年 09月 13日

塔大阪歌会詠草 2008年9月

幾十の破片となりてそれぞれの宇宙を映す投げた手鏡
ひとつだけ朝顔ひらき誰もいぬ運動場に降る宇宙線
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by araimitsu | 2008-09-13 20:48 |
2008年 09月 12日

塔2008年6月投稿→9月掲載<吉川宏志選>

058.gif葱坊主数え終わった頃にまた一番星がまたたくだろう
057.gif待機して合図を待てと言われたがずるりずるりとはみ出てしまう
058.gif浅漬けで茶を飲みおれば夕焼けの子を待つ母は踏切の前
057.gif節々の痛みこらえて横たわる 五月の庭に木々芽吹く音
058.gif深呼吸しても苦しいこの町の気圧の谷がとても深くて
058.gif春の日の海辺のきみは幼くて弟橘と名付けたあの日
057.gif鯉のぼりの口はわたしの悩みをも飲み込むために空で待ってる
058.gif群青の空のつばめよあのビルは崩れ落ちたよきみのいぬ間に
057.gif銀行の帰りに寄ったドトールの窓辺の席で読むカラマーゾフ
058.gifひとりごと言いつつ歩く母のため春の夜道の小石をひろう
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by araimitsu | 2008-09-12 20:07 |